科学論文紹介

染色体が短いと不利?有利?減数分裂中の相同組み換えについての研究

ステファニーさんによるイラストACからのイラスト

論文名: Multilayered mechanisms ensure that short chromosomes recombine in meiosis (nature; pubmed)

減数分裂における相同組み換えは、内在性のDNA二本鎖切断機構(DSB)により開始し、染色体の正確な分配のために必須イベントとなっている。
ところで、各染色体はそれぞれ固有のサイズを有している訳であるが、仮に、相同組み換えの位置がランダムだとすれば、短染色体は相同組み換えの失敗のリスクが高いことになる。
しかし、実際には、短染色体が分配異常を起こしやすいといった事象が観察されることはない。
むしろ、様々な研究から、染色体の長さとDSB(もしくは、DSB惹起蛋白質)の頻度との間には負の相関があることが示されている。

今回紹介する論文は、この負の相関関係を生み出すメカニズムについて、出芽酵母を用いた実験から、DSB惹起蛋白質の集積メカニズムを提唱した報告である。

まず筆者らは下記の2つの現象を見出した(論文中では、3 pathwaysと書かれている)

1. 複製はDSB惹起蛋白質を制御しており、必然的に複製完了が早い短い染色体はDSB惹起蛋白質が早期から結合する。

2. セントロメア近傍ではDSB惹起蛋白質の結合頻度が高く、テロメア近傍ではDSB惹起蛋白質の結合頻度が低い。

しかしながら、この2つの現象だけでは、染色体の長さとDSB惹起蛋白質頻度との間の負の相関は説明しきれなかった。
そこで、筆者らは、短染色体はDSB惹起蛋白質を集積させる内在的な機構を有していると予測した。
この可能性を検証するために、230 kbpの1番染色体と1532 kbpの4番染色体を人工的に組み換え(532 kbpと1235 kbp)、DSB惹起蛋白質結合の動態を調べた。
その結果、これら2つの組み換え染色体は、長さから予測されるよりも高レベルでDSB惹起蛋白質と結合していることが確認された。
また、563kbpの8番染色体と440 kbpの4番染色体を人工的に組み換えて検証したところ(177 kbpと825 kbp)、177kbpとかなり短いにも関わらず、もともと短い1番・3番・6番染色体のような振る舞いは見せなかった。
以上のことから、短染色体には内在的にDSB惹起蛋白質を集積する機構があると考えられる。

中学生の頃だったか、染色体は何故こんな不思議な構成をしているのだろうと不思議に思った記憶がある。何故長さがバラバラなのだろう?なぜ細かく分かれているのであろう?といったことを考えていた気がする。
この論文の結果から予測するに、染色体を短くすることには何らかの利点があるものの(複製速度が上がるとか)、相同組み換え失敗のリスクが高くなるデメリットととのtrade-offになっており、DSB惹起蛋白質を集積できる性質をもつ染色体が短くなれるのではないだろうか。