科学論文紹介

APOEのε4アレル保有は脳血液関門の決壊や認知機能低下と相関する

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論文タイトル:APOE4 leads to blood–brain barrier dysfunction predicting cognitive decline (Nature: pubmed link)

最近の研究から脳血液関門(BBB)の決壊が認知機能低下の早期マーカになることが示唆されている。一方で、APOEのε4アレル(以下、APOE4)はアルツハイマー型認知症の主要な感受遺伝子で、BBBの決壊を加速することが知れている。しかしながら、APOE4による脳血管の異常が、認知機能低下につながるのかは未解明であった。

そんな中、本論文は、アルツハイマー型認知症患者のデータ解析からAPOE4保有者はε3アレルのホモ(以下APO3) 保有者に比べて脳血液関門の決壊度合いが高く、認知機能に関しても予後が悪いことを示した。

興味深いことに、APOE4とAPOE3でβアミロイドやリン酸化タウ蛋白質の蓄積度には変化がなかった。これは、APOE4がβアミロイドやリン酸化タウ蛋白質とは独立したリスクファクターであることを示唆している。

ここで、認知症患者の脳脊髄液において血小板由来成長因子受容体-β(sPDGFRβ)レベルが上昇しており、BBBの決壊や認知機能低下と相関することが知られている。このリスクファクターとAPOE 4の関係を調べるために、sPDGFRβ低レベル群と高レベル群に分け、さらにそれぞれをAPOE4とAPOE3に分類した (つまり4群)。その結果、APOE4保有群では、sPDGFRβの高レベルと低レベルで認知機能の低下度合いに差があったのに対し(時間経過で解析)、APOE3ではsPDGFRβの高レベルと低レベル認知機能の低下度合いほとんど差がなかった。つまり、sPDGFRβのレベルによる認知機能低下の予測は、APOE4にのみ適応できるという結果である。

まとめると、APOE4保有は、BBBの決壊、ならびに認知機能低下に関与すると考察される。なお、本論文で示しているのは基本的に相関関係のみだが、マウス実験の結果を引用しながら議論が進めることで、考察についてもかなり説得力の高いものとなっていた。