科学論文紹介

SARS-CoV-2はACE2とTMPRSS2を利用して細胞に侵入する

take-cさんによるイラストACからのイラスト

論文タイトル:  SARS-CoV-2 Cell Entry Depends on ACE2 and TMPRSS2 and Is Blocked by a Clinically Proven Protease Inhibitor (Cell)

SARS-CoV-2の細胞侵入メカニズムについての報告(pubmed)。

SARS-CoV-2(ウイルス名)によるCOVID-19(病名)が大流行し、世界中に多大な影響を与えている。治療薬やワクチンの迅速な開発が望まれているが、そのためには、SARS-CoV-2の感染メカニズム解明が必須である。
一般的にウイルスは、1.細胞表面への接着、(2.エンドサイトーシス)、3.膜融合、4.脱殻の4ステップにより標的細胞に侵入する。
最初の段階である、細胞表面への接着には、ウイルス表面に存在するスパイク(S)蛋白質が関わっている。
まず、筆者らは、細胞指向性を調べるため、水疱性口内炎ウイルス(VSV)にSARS-SとSARS-2-Sを組み込み、様々な細胞に感染させた。
その結果、両者は同じ細胞種に高い感染能を示し、同様のメカニズムで細胞に侵入していることが示唆された。

ここで、SARS-SはACE2受容体との結合を介して、ウイルスの細胞表面の接着を担うことが知られている。
そこで、SARS-2-Sの配列を調べたところ、ACE2受容体の結合に必須なアミノ酸配列はすべて保存されていた。
さらに、ACE2に対する抗血清を添加したところ、SARS-2-Sを組み込まれたVSVの細胞侵入は有意に低下した。

また、SARS-CoVはエンドソームに存在するシステインプロテアーゼCathepsin B/L、セリンプロテアーゼTMPRSS2を利用して、S蛋白質を開裂させることで、膜融合能を獲得することが知られている。
そこで、これら2つのプロテアーゼ(それぞれ、camostat mesylateとE-64d)に対する拮抗薬を添加したところ、SARS-2-Sを組み込まれたVSVの細胞侵入は有意に低下した。

camostat mesylateとE-64dはどちら承認薬であり、最小の臨床試験により速やかにCOVID-19への適応拡大が認められることが期待される。