科学論文紹介

ミトコンドリアネットワークが造血幹細胞の老化の指標になる?

mmaruさんによるイラストACからのイラスト

論文タイトル:Asymmetrically Segregated Mitochondria Provide Cellular Memory of Hematopoietic Stem Cell Replicative History and Drive HSC Attrition (Cell Stem Cell)

分裂回数の多い造血幹細胞では機能不全のミトコンドリアが蓄積するという報告(pubmed)。

筆者ら、まず、移植により分裂回数が多い造血幹細胞(T-SLAM; 移植されていない造血幹細胞はNT-SLAM)で、ミトコンドリアのネットワークが過度に密集し、クリステ構造も崩壊していることを突き止める。
このミトコンドリアの異常は、移植などの臓器再構築といった過激な条件でなくても、恒常性維持のために分裂回数が多くなった造血幹細胞でも見られた(分裂回数はH2B-GFPの減少で評価)。
なお、興味深いことにT-SLAMから分化した祖先細胞ではミトコンドリアネットワークの異常は観察されなかった。

ここで、細胞分裂にあたってのミトコンドリア分配に着目したところ、NT-SLAMでは均等分配であったのに対し、T-SLAMでは分配に偏りがあり、一方の細胞により密集したミトコンドリアネットワークが継承されていた。
このミトコンドリア分配には、ミトコンドリア分裂必須因子として知られるDrp1が作用している模様。

以上の結果から、造血幹細胞の細胞分裂にあたって、機能不全ミトコンドリアを継承した方が幹細胞プールの維持に携わり、正常なミトコンドリアを継承した方が分化していくことが考察される(おそらく、正常なミトコンドリアを継承しないと分化できないと思われる)。ミトコンドリアネットワークが老化造血幹細胞のマークとなり得るのが非常に興味深い。