科学論文紹介

がん細胞はどこでも細胞分裂できる

ステファニーさんによるイラストACからのイラスト

論文タイトル:Oncogenic Signaling Alters Cell Shape and Mechanics to Facilitate Cell Division under Confinement (Developmental Cell)

がん細胞で恒常活性化することが知られているRas-ERKシグナルにより、硬い基質内における細胞分裂が容易になるという報告(pubmed)。


まず、筆者らは、発がん性h-RasG12Vを上皮細胞に発現させると、methaphase期にある細胞がより球形になることに気が付く。
この球形化は収縮性のactomyocinが担っている模様(Ect2のknockdownで球形化がキャンセルされることから)。
ここで、細胞表層部のactomyocinは分裂期にある細胞を硬くすることが知られている。
そこで、h-RasG12Vを発現させた上皮細胞の硬さを評価したところ、分裂期にある場合のみコントロールよりも硬くなっていることが確かめられた。

続いて細胞を硬い基質の中に埋め込んで、h-RasG12V発現が細胞分裂に与える影響の評価を試みた。
まず、h-RasG12Vを発現させないコントロール細胞は、硬い基質内では平らなまま細胞分裂を進行し、そのために細胞分裂エラーも多く観察された。
一方、h-RasG12V発現細胞は、硬い基質内でも球形に近づきながら細胞分裂を進行し、観察された細胞分裂エラーも少なかった。

以上の結果から、Ras-ERKシグナルの向上活性化により、がん細胞はどんな環境(転位先)でも正常に細胞分裂できる能力を獲得していると考察される。