科学論文紹介

結局規則正しい生活がコラーゲンの恒常性維持には必須だよという研究のお話

ガイムさんによる写真ACからの写真

Introduction

コラーゲン原繊維(細胞外蛋白質であるコラーゲンが規則的に寄り集まってできる)は、胚発生の段階で構築され、死ぬまで入れ替わることなく存在し続けるという驚くべき性質を持つことが知られています(pubmed)。
なんでも、Thorpe et al.によると(pubmed)、腱に存在するコラーゲンの半減期は最長で200年にも及ぶそう。

驚きですね。
あまり考えたことはなかったですが、確かに、古くなったコラーゲン原繊維を分解して新しいものを構築し直すには大量のエネルギーと時間がかかってしまいます。
とはいっても、ダメージなどで疲弊していってしまうので、全く入れ替わらないというのは考えづらいところです。
実際、機械的刺激により線維芽細胞でコラーゲンが合成されるといった報告(pubmed)もあり、コラーゲンは新規に合成されている模様。

コラーゲン原繊維は入れ替わらないけど、コラーゲンは合成されているという一見すると矛盾した証拠が出揃っている訳です。
そんな中Chang et al.により、コラーゲン原繊維は常に一定の構造を取っているわけではなく、ディアンリズム(体内時計)に従って、変化していることが報告されました(pubmed Circadian control of the secretory pathway maintains collagen homeostasis.)。

Results

コラーゲン原繊維は24時間周期で変動している

まず、筆者らは、透過型電子顕微鏡を用いて、野生型マウスのアキレス腱を観察しました。
すると、コラーゲン原繊維の直径は3峰性の分布を示すことが分かり(以下、D1, D2, D3)、その分布パターンは、一日のうちの時間に応じて変化することに気が付きます(Fig. 1A-C)。

D1: 直径 < 75 nm
D2: 直径 75 – 150 nm
D3: 直径 > 150 nm

D1の数は、夜早い時間帯(ZT12)でピークに達するようです (Fig. 1E)。

詳細に観察したところ、D2・D3は一定の場所を保つのに対し、D1はD2・D3の間を動き回る様子が観察されました(Fig. 1G-H, Sup Video 3)。

これらの結果から、コラーゲン原繊維の構造は一定でなく変化し続けており、しかもその変化はサーカディアンリズムに従っていることが分かります。

プロコラーゲンは周期的に分泌される

コラーゲン原繊維の挙動がサーカディアンリズムに従っているなら、コラーゲン遺伝子の発現がサーカディアンリズムに従っているか気になるところです。
しかしながら、時間毎における腱の転写プロファイルを解析したところ、コラーゲン遺伝子は時間経過で変動しないことが判明します(Extended Fig. 2)。

どうしたものか、というところですが、筆者らは、小胞体上のリボソームの数が周期的に変化することに気づきます (Extended Fig. 3A & B)。

つまり、コラーゲンの恒常性が分泌経路における翻訳で制御されている可能性が示唆される訳です。

実際、プロコラーゲンの分泌経路に関わる因子(SEC61/TANGO1/PDE4D/VPS33B)の量は、分泌過程の時間枠内で周期的に変化するようです(Fig. 2)。
また、併せて、コラーゲンの分解に関わるCTSKも周期的に変化することが示されていました(Fig. 2)。

SEC61: 新規合成プロコラーゲンを小胞体内部へ ⇒ CT3
TANGO1: プロコラーゲンを小胞体からゴルジに輸送 ⇒ CT7-11
PDE4D: プロコラーゲンの輸送? ⇒ CT19
VPS33B: プロコラーゲンの分泌? ⇒ CT23
CTSK: コラーゲンの分解 ⇒ CT3-7
CTはcircadian timeの略で、内因性リズムの位相を特定するための時刻。

SEC61/TANGO1/PDE4D/VPS33Bをノックダウン、もしくはノックアウトすると、コラーゲン原繊維は構築されなくなり(Fig. 4)、CTSKを薬剤で阻害するとコラーゲンが過剰に蓄積する(Fig. 3D)ようなので、これらの因子の制御がコラーゲン原繊維の恒常性に必須だと言えそうです。

まとめると、周期的なプロコラーゲンの分泌と、コラーゲン分解酵素発現の変動により、コラーゲン原繊維は24時間周期で変動しているといえそうです。

分泌経路の周期を崩すと、コラーゲン原繊維が異常な構造をとる

さて、周期的なプロコラーゲンの分泌と、コラーゲン分解酵素発現の変動が示されましたが、果たして、これらの現象が周期的に生じることに意味はあるのでしょうか。

この疑問に答えるため、筆者らは、体内時計が機能しないClockΔ19マウスから線維芽細胞を採取し、コラーゲン原繊維の挙動を調べます。
すると、ClockΔ19の線維芽細胞も培養中にコラーゲン原繊維を構築するようすが観察されました(Fig. 7C)。
つまり、周期的なプロコラーゲン分泌は、コラーゲン原繊維の構築に必須ではないようです。

また、ClockΔ19線維芽細胞はコラーゲン原繊維できるだけでなく、構築するコラーゲン原繊維の量が、野生型の線維芽細胞と比べて高い傾向にあることも分かりました(Fig. 7C)。
すべてのタイムポイントを平均化すると、ClockΔ19線維芽細胞はコラーゲン遺伝子Col1a1 mRNAのレベルが高く、Ctsk mRNAのレベルが低くなっているようです(Fig. 7F & G)。

コラーゲン原繊維の量が増えるならいいのでは?と思うところですが、ClockΔ19マウスの腱を観察すると、コラーゲン原繊維の構造が崩れている様子が観察されました(Fig. 8B-D)。腱自体も細くなっており、弾性・負荷耐性が低下しているようです(Fig. 8E-F)。

つまり、サーカディアンリズムがコラーゲン原繊維の量が増えすぎないように制御しており、この量の制御がコラーゲン原繊維の構造を保つのに必須という結果です。

Discussion

サーカディアンリズムがコラーゲンの恒常性維持に必須だという報告でした。

さて、生活リズムの乱れは、サーカディアンリズムも乱れにつながります。
今回の報告からすると、サーカディアンリズムの乱れは、コラーゲンの構造を崩してしまいます。

結局、規則正しい生活が、コラーゲンひいてはお肌を保つのに必須という訳ですね。