科学論文紹介

Search-and-replace genome editing without double-strand breaks or donor DNA ~DNA二本鎖切断を伴わない最新のゲノム編集~

コチさんによるイラストACからのイラスト

遺伝子を自由自在に編集できるCRISPR/Cas9システムは、あらゆる疾患の遺伝子治療への応用が期待されています。しかしながら、その性質上、DNA二本鎖切断を伴うため、予期せぬ変異の導入やp53の活性化のような望まぬ結果を導く可能性があります。これまで、二本鎖切断を伴わないゲノム編集として、Base editing technologyが開発されてきましたが、現在のところ、C→T/G→A/A→G/T→Cの4つの置換しか成し得ていません。また、二本鎖切断を伴なわずに数塩基を挿入・欠失させてやることはできません。

今回報告された‘search-and-replace’ genome editing technologyはそのような現状を打破する画期的な技術となり得ます。この技術では、Cas9とgRNAの両方に工夫が施されます。まず、Cas9 (H840A) nickaseのC末にM-MLV逆転写酵素(RT)をリンカーでつないでやります。さらに、sgRNAの3’末端にPrimer-binding site (PBS)とRT template (3’-PBS-RT template-sgRNA-5’)を付加します。Cas9 nickase によりnickが導入されてふらふらした一本鎖DNAにPBSがHybridizeし、RT templateを鋳型にDNAが逆転写され、そのhybridizeした配列が伸長されます。この新規に伸長されたDNA配列が修復の過程でゲノムに組み込まれることで、変異が修繕できるという仕組みです (Fig. 1C)。言葉で説明するには複雑すぎるので、論文のFigをご参照ください、、、

RTに変異導入(Fig. 2 ;PE2と命名)、変異鎖にさらなるnickの導入(Fig. 3; PE3と命名)などを検討し、40%近くの変異効率を達成していました(もちろん標的配列にはよる)。PE3は最も変異効率がいいものの、予期せぬ変異が入る確率もその分上がってしまうようです。

sgRNAの最適化も検討されていました。PBSの長さについては、8-17 ntで検討されていて、標的配列毎に最適なものがあるみたいです。長い方が、一概にいいとは言えないみたいです(Fig. 2A)。なお、極端なGC contentは避けた方が無難なようです。また、RT templateの長さについても、7-20 ntで検討されていて、これも標的配列によるみたいです。

さらに、PE3システムを用いて様々なゲノム編集が試みられます。まず、長いRT templateを使うことで、nick導入位置から12塩基から33塩基上流の位置でも塩基置換を導入できることが示されていました (Fig. 4B)。なので、PAMが近くになくても問題ありません。また、塩基置換のみならず、1塩基挿入・3塩基挿入・1塩基欠失・3塩基欠失も高効率で惹き起こせるようです(Fig. 4F; それぞれ、32 ± 9.8% , 39 ± 16%, 29 ± 14%, 32 ± 11%)。Fig. 4Gでは5-80 bpの欠損も示されていました。また、Fig.5Gでは、6xHis tag (18 bp, 65% efficiency)やFLAG tag(24 bp, 18% efficiency),、LoxP配列(44 bp, 23% efficiency)の導入も示されていました。

Abstractを読んでる時は、効率低そうだなぁと思っていたのですが、本文を読んでみるとかなりの高効率で驚きました。個人的に気になったのは、LoxP配列が導入できることです。二本鎖切断を伴う従来のシステムを用いた受精卵ゲノム編集で、一挙にFloxを作ろうとしても、間の配列が抜けきってしまうことがほとんどですが、このsearch-and-replace法ならできるかも!?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31634902