科学論文紹介

初期胚の不均一性

割球の運命分けはいつ行われるのか

精子と卵子が融合して作られた受精卵は、卵割を経て割球の数を増やし、やがて胎児になる部分と胎盤になる部分に分かれていきますが、この運命分けがいつ行われるのかというのは未だ決着がついていないところです。

最近この運命分けに関係する因子がCellに報告されていたので、ご紹介いたします。

ちなみにですが、本論文とback-to-back (ページ数連番)でCARM1 and Paraspeckles Regulate Pre-implantation Mouse Embryo Developmentというタイトルの論文が報告されており、こちらも初期胚の不均一性に関係します。紹介は致しませんが、最後の文献リストに入れておくので、よければご参照ください。

2細胞期におけるLincGETの不均一な発現が細胞運命を決める?

Asymmetric Expression of LincGET Biases Cell Fate in Two-Cell Mouse Embryosというタイトルの論文です(1)。

タイトルの細胞運命というのは、胚盤胞期において内側の細胞(Inner Cell Mass; ICM;将来は胎児)になるか外側の細胞(trophectoderm; TE; 将来は胎児を支える組織)になるかの運命をさしています。近年、この運命決定の要因として、4から8細胞期の胚における割球間の遺伝子発現パターンの違いが報告されています。見た目上は全く違いがありませんが、遺伝子発現パターンが違っているわけです。
さてこの運命分けが、実は2細胞期の胚からすでに始まっているということを報告したのが本論文になります。

まず筆者らは、FISHやTM-qPCRという方法により、LincGETが2-4細胞期の割球間で不均一に分布することを明らかにします。さらに、2細胞期胚のうち片方の割球でLincGETを人為的に増やしてやると、その割球がICMに分化しやすくなることを示します。反対に、LincGETの量を片方の割球で減らしてやると、ICMでなくTEに分化しやすくなるようです。
人為的に、LincGETの量を操作してはいますが、非常に綺麗な結果です。

さらに、LincGETがCARM1という蛋白質と複合体を作ることをpull down assayにより示します。CARM1は、4細胞期の割球間で不均一に分布することが知られているタンパク質です。
続いて、LincGET/CARM1複合体がICMへの分化に必要な遺伝子の発現を高めることが示されていました。また、ATAC-seqにより、LincGET/CARM1複合体がクロマチンを開いた状態にし、遺伝子の発現を起こりやすくすることも示されていました。

他にも様々な実験から論が補強されており、2細胞期胚におけるLincGETの不均一な分布が、割球の運命分けの上流因子として機能する可能性は高いと思われます。

おわりに

病気とはあまり関係のない、発生学のかなり基礎的な論文の紹介になりましたが、いかがでしょうか。専門用語が分からなくても分かるように書いたつもりですが、難しかったかもしれません。もう少し分かりやすく書けたらいいですが、今はこれが限界ですね、、、練習あるのみです。

私は、基礎的な研究の方が好きなので、こういう論文も逐次紹介していくと思います。詳しく知りたい研究とかあれば(ノーベル賞のんとか?)、リクエストしていただけると嬉しいです。

それでは、皆さまの知的好奇心が少しでも刺激されますように。

今回の文献

1. Cell. 2018 Dec 13;175(7):1887-1901.e18. doi: 10.1016/j.cell.2018.11.039 (pubmed).
2. Cell. 2018 Dec 13;175(7):1887-1901.e18. doi: 10.1016/j.cell.2018.11.039 (pubmed).